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POST:井坪 寿晴 2025.05.23
豊かさとは何かを教えてくれた人
皆さんこんにちは、井坪工務店の井坪です。
まだ5月だというのに、夏のような暑さが続いていますね。
最近、季節のリズムが変わってきたと感じる方も多いのではないでしょうか。
春と夏の境目が曖昧になり、秋は年々短くなっているように思えます。
まるで地球全体が、見えない大きなうねりに翻弄されているかのようです。
その根っこにあるのは、やはり「人の営み」。
便利さや快適さを追い求めるなかで、私たちは自然とのバランスを崩してしまったのかもしれません。
さて、皆さまはいかがお過ごしでしょうか。
先日、ウルグアイの元大統領・ホセ・ムヒカ氏のドキュメンタリー番組を観ました。
“世界でいちばん貧しい大統領”と呼ばれながら、誰よりも人間らしく、深くて豊かな思想を持つ方です。
なかでも心を打たれたのは、2012年の国連サミットでのスピーチでした。
その一言一言に、私はしばらく言葉を失い、目の奥がじんと熱くなりました。
「貧乏とは、少ししか持っていないことではなく、
無限の欲望に支配されていることだ。」
「人類は消費するために生まれてきたのか?
幸福とは、物を買うことではなく、人生を愛することだ。」
どれだけ便利になっても、どれだけモノが増えても、
そのぶん“心の余白”が減っていくような感覚。
それに覚えのある方も、きっと少なくないはずです。
ムヒカ氏は、高級車も公邸も持たず、農場で野菜を育てながら大統領として国を導きました。
給与の大半を寄付し、古びたフォルクスワーゲンを自ら運転する日々。
「自分の生活を縮めることで、他者のために広げられる世界がある」ということを言葉ではなく、生き方で示した人でした。
私は経営者として、家づくりを生業にしています。
そんな私でも、ムヒカ氏の語る「本当に豊かな暮らし」とは何か、という問いには、深くうなずいてしまいます。
「何を持っているか」ではなく、「何に感謝できるか」
「どれだけ得たか」よりも、「どう生きているか」
それが、豊かさの本質なのかもしれません。
時代はますます、効率化やデジタル化、そして住宅においては高性能化を求めています。
もちろん、断熱や耐震、省エネといった機能の進化は、安心で快適な暮らしには欠かせません。
ですが、どんなに技術が進んでも、私たちは“人間らしさ”や“手ざわり”、
つまり“感覚に宿る価値”を忘れてはいけないと思うのです。
住まいも人生も、シンプルであればあるほど、本質が際立ちます。
性能と感性、その両方を大切にすることでこそ、「本当に豊かな暮らし」に近づけるのだと私は信じています。
ムヒカのような人生を歩むのは、簡単ではありません。
でも、彼の言葉のひとつを胸に置いてみるだけで、
日々の「選び方」はきっと変わってくるはずです。
それは仕事でも、家づくりでも、日常のほんの小さな場面でも。
「私たちは発展するために生まれてきたのではなく、幸せになるために生まれてきたのです。」
この言葉を忘れずに、今日も私は、自分の暮らしと仕事を、少しだけ丁寧に見つめ直してみたいと思います。感謝!